ハラキリ文化

 朝青龍引退が引退しました。
 どうにか乗り越えられそう、と思っていたらしいですが、横審から「引退勧告」が突きつけられ、理事会では「引退勧告」か「解雇」かという話になったときの、決断だったみたいですね。
 「引退」では横綱としての名誉が保たれ、退職金も出るし断髪式もできる。しかし「解雇」となればそれが一切なくなる。ギリギリの選択だったですね。
 これを聞いたとき、江戸時代の武士の「切腹」と「斬首」を思い出しました。
 「切腹」は武士としての名誉は保たれますが、「斬首」はそれが剥奪され罪人扱いになります。「切腹」と言っても、実際お腹を刀で切るのは痛いので、実際の切腹は刀を腹に当てたところで介錯人が刀を振りかざします。ですので、方法論としては、「切腹」も「斬首」も同じですが、死後の武士としての体面が保たれるかどうかが大きいのです。
 まさに「引退」は「切腹」で、「解雇」は「斬首」。「引退」した朝青龍にたいして、街の声はかなり寛大に朝青龍をかばう意見がマスコミに取り上げられていますね。そんなマスコミは、先週までは鬼の首を取るかのごとく連日の朝青龍バッシング合戦だったのに、いざ引退したら手のひら変えて一斉に「偉大なる横綱」扱いだもんなぁ。節操ないな、まったく。世は昭和の影も薄くなった平成の時代ですが、いまだに江戸の「ハラキリ文化」が色濃く残っているんだなぁ、と思いました。
 朝青龍に関しては、問題を起こした本人ももちろん悪いけど、一番悪いのは、ちゃんと横綱を教育してこなかった親方衆にあると私は思っています。日本の精神文化の崇高な部分まで求められるのが横綱の地位ですから、他国からきた青年にはなおさら日本人以上に勉強させなかればいけなかったでしょう。それを「強い」ことだけでよしとしてしまえば、本人はそんなことはわからないわけですから、そんな考えになってしまうのは当たり前のことでしょう。
 さて、大看板を失った大相撲はどうなるのか。白鵬一人だけで支えきれるのか。協会は朝青龍問題をきちんと省みて、第2・第3の「悪童」を出さないようにしてほしいところです。